ファクタリングを利用するうえで覚えておきたい第三者対抗要件とは?

ファクタリングを利用するうえで覚えておきたい第三者対抗要件とは?

ファクタリングは企業の資金調達手段として広く利用されていますが、取引を安全に行うためには法的な側面も理解しておく必要があります。特に重要なのが「第三者対抗要件」という概念です。

取引の安全性と有効性を確保するために欠かせない要素です。ファクタリングにおける「第三者対抗要件」の詳細や重要性について詳しく見ていきましょう。

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第三者対抗要件とは

第三者対抗要件とは

資金繰りに悩む経営者が目にする機会の多い「第三者対抗要件」は、耳慣れない言葉かもしれません。しかしファクタリングを利用する際には避けて通れない重要な概念です。第三者対抗要件について正しく理解することで、安全かつ効果的にファクタリングを活用できます。

第三者対抗要件の定義

第三者対抗要件は法律用語で、債権を譲渡する際に関係します。簡単に言えば、ある債権が複数の人や会社に譲渡されたとき、誰の権利が優先されるかを主張するための条件のことです。

法律の世界では「対抗」という言葉をよく使いますが、これは自分の権利を他人に主張することを意味します。

具体的な例を挙げると、会社Aが持つ債権をB社に譲渡したのち、同じ債権をC社にも譲渡してしまったような場合を考えてみましょう。このとき、B社とC社のどちらの権利が優先されるのか。それを決めるのが第三者対抗要件なのです。

第三者対抗要件を備えていない場合、せっかく譲り受けた債権の権利を主張できなくなる可能性があります。安全で効果的なファクタリングの利用には、第三者対抗要件の理解と適切な対応が必要です。

対抗要件を備える方法

では具体的にどうすれば対抗要件を備えられるのでしょうか。方法は主に3つあります。

1つ目は、ファクタリング利用者から売掛先へ通知することです。この際、確定日付のある証書が必要となります。確定日付とは、文書がいつ作成されたかを公的に証明するものです。

2つ目は、債権が譲渡されたことを売掛先に承諾してもらうことです。この場合も確定日付のある証書が求められます。

3つ目は、債権譲渡登記を行うことです。これは後ほど詳しく説明します。

いずれの方法も一長一短があります。自社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。

対抗要件の重要性

対抗要件の重要性の2つの理由を見ていきましょう。

1つ目は、債権譲渡の有効性を第三者に主張するためです。対抗要件を備えることで、譲受人は債権譲渡の事実を第三者に対して法的に主張できます。これにより、譲受人の権利が法的に保護されます。

2つ目は、複数の譲受人間での優先順位を決定する基準となるからです。先ほどの例で言えば、B社とC社のどちらが優先されるかを決めるのが対抗要件です。先に対抗要件を備えた譲受人が優先され、債権の二重譲渡のリスクから譲受人を保護します。

経営者は、こうしたリスクを十分に理解し、適切なリスク管理と法的手続きの遵守を行うことが求められます。

債権譲渡登記とは

債権譲渡登記とは

先ほど対抗要件を備える方法の1つとして「債権譲渡登記」を挙げました。この制度は比較的新しく、多くの経営者にとってなじみが薄いかもしれません。

しかし、ファクタリングを利用するうえで知っておくべき重要な制度です。詳しく見ていきましょう。

債権譲渡登記の概要

債権譲渡登記は、法人が債権の譲渡等を行った場合に、その事実を登記し、対抗要件を具備するための制度です。2005年に創設されました。

登記することで、債権譲渡の事実が公示され、第三者に対して債権譲渡の効力を主張できるようになるのです。多数の債権を一括して譲渡する際の手続きの簡素化にもなります。

ただし、この制度を利用できるのは法人だけです。個人事業主は、確定日付のある証書による通知や債務者の承諾など、他の方法で対抗要件を備える必要があります。

債権譲渡登記にかかる費用

債権譲渡登記には、登記費用がかかることに注意が必要です。主に、登録免許税と司法書士報酬の2つの費用が発生します。

法務局に支払う登録免許税は、債権の個数が5000個以下の場合は1件につき7,500円、5000個を超える場合は15,000円となります。

司法書士に支払う報酬は、7,000円程度が一般的な相場です。

費用は、債権譲渡の規模や頻度によって変動します。ファクタリングを利用する際は、諸経費を含めて総合的に判断することが大切です。

Q.債権譲渡登記がないとファクタリングを利用できないのか?

Q.債権譲渡登記がないとファクタリングを利用できないのか?

ファクタリングを利用する際、常に債権譲渡登記が必要なわけではありません。個々の取引状況や目的、関係者間の関係性などを考慮して判断する必要があります。

2社間ファクタリングの場合

2社間ファクタリングは、資金を必要とする企業とファクタリング会社の間で直接行われる取引形態です。この方式では、ファクタリング会社によっては債権譲渡登記を必要としない(※)場合があり、これにより手続きが大幅に簡素化されます。

※厳密にはファクタリング会社が審査その他の事情・指標・信義則の観点から債権譲渡登記を一定の期間猶予する形でこれを実現するケースもありますが、ほぼケースバイケースといってよいでしょう。

急な資金需要がある企業にとって、スピード感ある資金調達は非常に魅力的です。

ただし、債権譲渡登記を行わないことで取引のリスクが高まる可能性もあります。ファクタリング会社はこのリスクを考慮し、手数料を高く設定する可能性があることを覚えておきましょう。

3社間ファクタリングの場合

3社間ファクタリングは、資金を必要とする企業(資金需要者)、ファクタリング会社、そして売掛先(取引先)の3社で行うファクタリングのことを指します。3社間ファクタリングでは、原則として債権譲渡登記は不要です。なぜなら、売掛先がファクタリング会社に直接支払いを行うため、代金の横領リスクや二重譲渡のリスクが低いからです。

ただし、具体的な条件はファクタリング会社によって異なります。利用を検討する際は、詳細を確認することが大切です。

債権譲渡登記を行うことによるファクタリングへの影響は?

債権譲渡登記を行うことで、ファクタリングにおいてさまざまなメリットがあります。

まず、ファクタリング会社のリスクが軽減されるため、審査に通りやすくなることです。ファクタリング会社のリスクが軽減することで、その分手数料が低くなる可能性もあります。これは、経営者にとって嬉しいメリットといえるでしょう。

また、債権譲渡登記によって、ファクタリング会社は二重譲渡のリスクを回避できます。企業の状況に応じて、債権譲渡登記の実施を判断することが大切です。

まとめ

ファクタリングを利用する際、第三者対抗要件を理解することは非常に重要です。債権譲渡が有効であることを他者に主張し、複数の譲渡先がある場合の優先順位を決める基準となります。

第三者対抗要件の一つに、債権譲渡登記があり、安全性がより高まります。しかし、費用や手続きが必要となるため、利用の際はメリットとデメリットを慎重に検討する必要があるでしょう。

ファクタリングの形態によっては、必ずしも債権譲渡登記が必要ではない場合もあります。重要なのは、自社の状況や資金需要に合わせて最適なファクタリング方法を選ぶことです。スピードが必要か、低コストを重視するか、あるいは安全性を最優先するかなど、自社のニーズを見極めることが大切です。

適切なファクタリング方法を選択することで、安全かつ効果的に資金調達を行うことができます。資金繰りを改善し、ビジネスの発展に役立ててください。

この記事を書いた人

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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